1.結婚指輪を手作りするための準備
昨今では結婚指輪を購入する方法も多様化してきました。 インターネットの普及によりネット販売で購入する人も増えているなかで、やはり実物を見て購入したいというお客様も沢山いらっしゃると思います。 中でも自分たちで好きなように手作りして結婚指輪を作って購入する手作り結婚指輪の人気が高まってきました。 お客様に手作りしていただくワックス製作の手順や、ワックスから貴金属の仕上げ行程まで詳しく解説いたします。
結婚指輪の購入方法を考える
まず、結婚指輪を手作りする上で、なぜ手作りを選ぶのか理由を考えたいと思います。 実店舗で購入する場合でも以下のように大きく別れると思います。
<既製品>
既製品の中でも以下のような種類があります
世界的な有名なスーパーブランド
販売会社独自のプライベートブランド
お店・工房単体で製作している商品
<オーダーメイド>
オーダーメイドでも以下のような種類があります
デザインを1から決めてお店・工房で製作してもらうフルオーダーメイド
お店のオリジナルをアレンジして製作するセミorアレンジオーダー
購入するお客様自身が手作りする手作り結婚指輪
購入する金額も二極化しているようで高額なものか、安価な物を購入するかのどちらかのお客様のシェアが多いようです。
高額な物を購入する場合は、ティファニーやカルティエのようなスーパーブランドを購入、または、予算は問わず自分の好きなデザインをフルオーダーメイドで製作。
安価な物を購入する場合は、ネット販売や素材を安価なシルバー製品にするなどして購入。
手作りで結婚指輪を作るメリットとして「自分の好きなデザインを作れる」、「スーパーブランド、フルオーダーよりも安価」と言う今のニーズにあった購入方法が「手作り結婚指輪」となります。 このような理由から手作りで結婚指輪を作るお客様が増えているようです。
自分で作るのは面倒くさい。もっと安くネットで販売してる指輪で良い。 という方もいらっしゃると思いますが、結婚指輪は一生添い遂げるパートナーとの愛の証として身につける物なので、やはり思い入れのある一生大事に出来る逸品として手作り結婚指輪の購入をお勧めしたいと思います。 当店では難しい指輪作りも、簡単に誰でも製作出来るように、便利な道具、工具等をご用意し、かつプロの職人がマンツーマンでサポートをするシステムを構築し、初心者の方でもプロの職人顔負けの仕上がりの結婚指輪が作れるようにいたしました。 どのようにして結婚指輪を製作していくのかを指輪のデザイン別に詳しく解説していきますので、手作り結婚指輪をご検討のお客様は是非参考にしていただければと思います。
製作するための素材や工具
指輪を手作りするとは言え、どのような材料や道具を使うのかを詳しく特徴などを交えながらご説明します。
■ 素材となるワックス
指輪を作るために元になるのはワックスというロウソクのロウのような素材の物です。
このワックスは色んな形があり、指輪以外でもペンダントやピアスなどもこのワックスを削って形にし、鋳造という方法でジュエリー製品にしていきます。
このワックス原型を鋳造してジュエリーを作る方法はロストワックス製法と言い、現在でもジュエリーを作るスタンダードな方法で実際にお店に並んでいる既製品などもほとんどがこの方法で作られています。
ですので、ワックスの部分をプロが作るか自分で作るかの違いだけで、通常のジュエリーを作る方法とまったく同じなので出来上がった指輪は一般のジュエリー製品と品質などは全く同じ物が出来上がってきます。
<3種類のワックス>
指輪を作るためのワックスは筒状のワックスを使います。筒状のワックスは指輪の幅に合わせて切り取るだけでドーナツ状の形になるので、余分な部分を削るだけで簡単に指輪の形を作り上げることが出来ます。
このワックスはブロックワックスと呼ばれる物で、固さによって色分けされて3種類在ります。 ワックスには更にシート状のワックスや線上のスプルーワックスと呼ばれる物があり、用途によって使い分けます。一般にジュエリー製品はブロックワックスを削って作ることが多いです。
<ワックスの特徴>
グリーン | 一番硬いワックス
メリット:硬いのでシャープなエッジの表現や細かいデザインを作ることが出来ます。
デメリット:硬いので削るのにかなり時間がかかる。力加減によって折れたり欠けたりするので初心者には不向き。
用途:顕微鏡などを覗きながら作業すればかなり細かいデザインを作れるのでフルオーダーメイド製作に向いている。
パープル | 中くらいの固さのワックス
メリット:ある程度の固さがあり細かいデザインを作ることが出来ます。
デメリット:硬いので削るのに少し時間がかかる。力加減によって折れたり欠けたりするので初心者には不向き。
用途:顕微鏡などを覗きながら作業すればある程度の細かいデザインを作れる。フルオーダーメイド向き。
ブルー | 一番柔らかいワックス
メリット:柔らかいので簡単に削れて短時間で原型を作ることが出来ます。
デメリット:少しこするだけで簡単に削れてしまうので角の立ったデザインや細かい表現には不向き。
用途:シンプルなデザインを作るのに向いているので初めてワックス作業する方でも簡単に原型が作れる。
<外径の違うブルーワックス>
当店でお客様に削っていただくワックスは一番柔らかいブルーワックスを使います。
柔らかいので指で撫でるだけで少しずつ削れてしまうので角がシャープに尖った様なデザインを作るには不向きですが、昨今の結婚指輪のトレンドはシンプルなデザインなので適しています。 丁寧に作業すればシャープなエッジを作ったりする事も可能なので初心者の方でも一番扱いやすいワックスで、短時間に原型を作ることが出来ます。
指のサイズによって外径の小さい「小」、大きなサイズを作るには「大」を使用します。 ワックスには最初から9号ぐらいの穴が空いており、9号以下の指輪を作るためには写真一番右の「穴無し」から小さい穴を空けて作るのですが、「穴無し」は外径も大きく穴が空いていないので削るのに手間も時間がかかります。 その為、当店では小さいサイズの指輪を作るために穴も小さく、外径の小さいオリジナルのブルーワックスをご用意しています。
■ 工具や道具
ワックスを削るための机は専用の彫金机を使います。プロの職人さんも使っているワックスを削ったり貴金属の製作作業に適した形をしています。 机の高さは通常の事務机などと違って高さがあり、下を向いた作業とならないため首や肩に負担がかからないように配慮された高さになっています。 長時間の製作作業でも苦にならず作業が出来るので、初心者のお客様でも3~4時間作業でも疲れるよりも楽しかったと言われるお客様がほとんどです。
<文房具系の道具>
ワックスの長さを測ったり、下書きをするのに文房具も使います。
上から、
マジック
削る部分の目安をマジックでしるしを入れたりして使用します。ブラシ
削った原型表面の細かいワックス粉を取り除くのに使用します。罫描きコンパス
ワックスに線を罫描いて目安線を引きます。スケール
作る指輪のサイズを計測します。
<工具類>
糸ノコ
チューブワックスから作りたい幅のワックスを切り出します。リーマー
ワックスの穴を削ってサイズを合わせるのに使用します。荒め置きヤスリ
おろし金のようにワックスを削る事が出来ます。ヤスリ(持ち手木)
表面の仕上げに使用しますヤスリ(持ち手緑)
荒削り用ヤスリです。ヤスリ(小3本)
丸、三角、甲丸の各種。削る部分によって使い分けます。
<ハンドモーター>
<ハンドモーターです。先に付ける治具によってワックスの表面にミゾを彫ったり、表面に凸凹のテクスチャーを入れることが出来ます。 ワックス作業では主にダイヤモンドの粒子が付いたダイヤポイントと呼ばれる治具を使います。 余りよく削れる刃先だと削れすぎてしまうことが懸念されますが、このダイヤポイントなら適度な削れ具合なので削りすぎる失敗が防げます。 失敗を防ぐために、不要なワックスを削って練習をしてから本番のワックスを削っていただいております。
<拡大鏡付きスタンド照明>
机の上を照らすスタンドライトですが、カバーを開くと拡大鏡が付いており、細かい作業をするのに便利なライトです。 光源はLEDライトになっており蛍光灯のようにちらつきがないため長時間の作業でも目が疲れないようになっています。
結婚指輪のデザイン別による製作方法-目次