3.結婚指輪の形とワックス作り方 表面の模様
全体の形が完成したワックス原型はそのまま貴金属に鋳造して表面を磨けばシンプルで光沢のある結婚指輪になります。 この表面を単純に磨くのではなくワックス表面に自分でテクスチャーを加えることによって手作り感をかもし出した味のあるデザインになります。
また、先の尖った治具などで溝ラインを彫って文字や絵を表現したりも出来ます。 ワックスは柔らかいので手作業やハンドモーターを使って簡単に表面に模様を入れることが出来ます。
ヤスリを使った表面の模様
最初の第1章準備のページでご紹介したヤスリを使って表面に模様を入れることが出来ます。 ヤスリを使えば表面に角をつけて折り目を付けたり、ランダムに削ってアンティーク風に仕上げることが出来ます。
前章でご紹介したお二人が手作りしていただいた指輪のワックスもストレート型の原型で完成ではなく、表面に模様を削って完成です。
このお客様の場合はトップ部分に三角のヤスリを使って表面にひし形の模様を削りだしたデザインで完成となります。
指輪原型の表面の削り方は、その削る部分や形によって違いますが写真のように手で持って削る場合が多いです。 この時に注意しないといけないのは、手に力が入りすぎてワックスを強く握ってしまいワックスを折ってしまう場合があります。
ワックスは便利な素材で折れたり欠けたりしても、熱で溶かしてくっつけたり盛り上げたり出来るのでご安心ください。 しかし、出来ることなら折れたりしないように、ワックスの持ち方を工夫しながら慎重に作業しましょう!
■ エッジの削りだし
ワックスの表面をヤスリを使って角、エッジのような部分を削って作り、表面に模様を作ります。 角を作ると言っても様々な方法や見せ方がありますので代表的な例を作品と共にご紹介いたします。
三角ヤスリで切り込み
削る部分はマジック等で下書きをしてわかりやすくしております。 難しい削り方の場合は不要なワックスで少し練習してから本番を削っていますので自信の無い方はまず練習しましょう。 三角のヤスリで表面がひし形の模様が浮き上がるようにエッジに切り込みを削りました。
女性物の結婚指輪の完成品は、当店の加工でダイヤを埋めこみ、ミル打ちを施して装飾し完成です。 男性物はワックスを削っていただいたそのままの形で完成です。
ヤスリで削って境目を作る
ワックス表面に斜めのラインをマジックで下書きをし、そのラインを境目にヤスリで削って折り目のような凸型のラインを作っています。 ワックスは半透明の素材なので写真では陰影がわかりにくいですが、貴金属で仕上がるとハッキリわかります。
プラチナで仕上がった結婚指輪ですが、ワックスではわかりにくかった折り目ラインも貴金属になると回りの景色の映り込みでハッキリわかるようになります。 レディスは斜めにダイヤを留めましたので、その形と同様の形をダイヤ無しで表現するために折り目を作ればペア感が増します。
丸ヤスリで境目となる溝を作る
上の写真の折り目を作る変わりに丸ヤスリで斜めに太めの溝を削って作っています。 こちらは折り目を削って作るよりも簡単で、マジックで下書きをした部分に沿って削るだけなので削る深さだけ考慮すれば簡単に作れます。
こちらもレディスのダイヤ部分に合わせてメンズ表面に斜め模様を削ったラインで表現しています。 溝の中をツヤ消し仕上げにすれば溝部分も強調されて、レディスとのペア感がいっそう増します。
山型の頂点を作る
通常の甲丸型ではなく、指輪表面の中央を境目に左右の面を斜めに削って山型のフォルムにしています。 この作業は手に持って削るよりも、表面の厚みを削る段階でヤスリの角度を一定に保って表面を削れば自然に山型の境目が出来上がります。
ブルーワックスは柔らかいので境目が波打って削れてしまいがちですが、最後に当店の職人がキレイに仕上げをさせていただければ大丈夫です。
中央部分がシャープに山型になったフォルムは甲丸型よりも幅が細く見えて、そのシャープさからかっこいい印象を与える結婚指輪になります。 あまり山の高さを高くすると両サイドの指にあたって邪魔になるので山の高さに注意して作ります。
半丸ヤスリで凹んだ面を削る
指輪の表面を凹型に削ったワックスです。甲丸型の表面が丸みを帯びたヤスリで削ります。 細目ヤスリでキレイに整えるのは難しいので最初は丸ヤスリを使って削る部分の大まかな凹型を削ります。その後で細目ヤスリで滑らかに仕上げていきます。
凸型の甲丸リングと比べて回りの景色の映り込みが面白い効果で、光り方も独特の輝きを放ちます。 全周を斜めラインを境目に螺旋状に凹みを作っています。
花びら型に削る
指輪の側面からワックスを見ると5角形の花びら型の形になるようにワックスを削って作ります。 全周の5等分にしるしを入れてその部分を三角ヤスリで溝を削り、平ヤスリで溝を左右に広げて花びら型に仕上げます。 見た名以上に簡単に作ることが出来ます。
花びら型の丸く飛び出た部分の厚みに注意しながら削っていきます。滑らかな丸型の花びらにするには全体のバランスを見ながら削っていけば簡単に出来るのでオススメです。 仕上がった結婚指輪は付けていてはわからない形ですが、指から外したときにインパクト大の結婚指輪になります。
■ 表面をランダムに削る
今度はヤスリを使って指輪表面をランダムに削って手作り感のあるデザインにする事が出来ます。 自分の思うように削った表面の模様は削る人によってそれぞれ違うので世界で1つのオンリーワン結婚指輪になります。
ヤスリ目をそのまま残した仕上げにしたり、光沢に仕上げても手作り感が出る表面の模様になります。 仕上げ方によってカジュアルにもアンティークにもなります。
表面をランダムに削って形に仕上げるのを考慮してワックスは少し厚めに仕上げます。 少し厚めの甲丸型や平打ち型のワックスを中目ぐらいのヤスリでランダムに表面を削って面を作ります。 何も考えずに削るよりも横方向から削ったり縦方向から削ったり、また広い面の隣は少しだけ削って小さな面を作ったりと意識して削った方がランダムな仕上がりになります。
写真左はヤスリ目を残した状態で仕上がりとした指輪です。
写真右は削った面はそのまま残してヤスリ目のみ仕上げによって光沢に研磨したデザインです。
どちらもランダムが面が不規則に並んでおり、磨かなければアンティーク調、磨けばカジュアルな仕上がりになる面白い手作り方法です。 既製品では出来ないデザインなので手作りならでわの結婚指輪といえます。
ここまではヤスリを使って表面に模様を入れたり、溝や形を削るなどして作れるデザインです。 ワックスの段階でお客様が形にしていただいて仕上がった指輪は余分な加工をしなくても充分価値ある逸品になります。 少し難しい削り方の指輪デザインもありますが、練習をしてから削ったり当店の職人がサポートしますので是非色々なデザインの指輪作りに挑戦して下さい。
尖った治具を使った模様
最初の第1章準備のページでご紹介したヤスリを使って表面に模様を入れることが出来ます。 ヤスリを使えば表面に角をつけて折り目を付けたり、ランダムに削ってアンティーク風に仕上げることが出来ます。
罫描きコンパスの尖った先を使って表面にキズをつけていきます。 キズとキズの間を埋めるようにきめ細かくするか、少し間を空けてキズをつけてもまた違った雰囲気になるのでその人の個性が出るデザインです。 光沢仕上げのピカピカした表面の仕上がりが苦手な人はオススメの手作り結婚指輪です。
表面に細かい線状のテクスチャーのついた表面は研磨しても細い溝の中まで磨けないので完全に磨かない状態で完成となります。 ツヤ消しとも言えない半光沢状の表面はアンティーク調に仕上がり個性的な結婚指輪になります。
上記でご紹介した表面のキズは罫描きコンパスでつけたものですが、コンパス以外でも色んな治具、道具を使ってテクスチャーをつけることが出来ます。 現在他の道具を使って表面に模様を入れるデザインを考案中ですので、完成すればホームページでご紹介いたします。
ハンドモーターを使った模様
ハンドモーターという先の治具が回転して表面に模様を入れたり削ったりをする道具を使って表面に模様を入れることが出来ます。 手作業で入れるのと違って短時間にテクスチャーを入れることが出来、ポイントを変える事で様々なデザインの表面模様が出来ます。 先の細いポイントを使って文字やマークのアウトラインを簡単に彫ることが出来るので、より拘ったデザインをご希望の方はオススメです。
■ 丸いラウンドポイント
丸いラウンド型のポイントを使えば表面を広く削ることが出来ます。 回転する丸いポイントには細かいダイヤ粒子が散りばめられており、その粒子の凸凹でワックスを削っていきます。 刃物ではないので回転時に指で触れても手が削れることが無く初心者でも安心して使えます。
岩肌の様に凸凹に削る
回転するラウンドダイヤポイントをワックス表面に押しつけるだけで削れます。ラウンドボールの大きさを変えることで彫り跡を大きくしたり小さくしたり調節します。 ボールの変更無しでも自分で押しつける時間で大きく削ったり小さく削ったりも出来るのでより自分なりの模様を彫ることが出来ます。
ダイヤポイントで削った面は凹んだざらざらした表面なので完全に磨くよりも半光沢の仕上げによってアンティーク調の風合いを出す仕上げにすることが多いです。 ある程度光沢が出るように磨くことも出来ますが、せっかく彫った自分の味のある彫り跡は残した仕上げにする方が手作りの味のある結婚指輪になります。
丸い形を活かして削る
丸いラウンド型のダイヤポイントを使って模様を彫ることも出来ます。 写真のワックスはハートの片方を彫った物ですが、このように単純な模様を自分で彫ることも出来、人気の模様です。 少し練習してからハートを彫っていただきますが、ハートの形は滑らかな形がキレイなので当店の職人がキレイに仕上げをさせていただいております。 また、丸い彫り跡を活かして下記のように様々なデザインを彫ることが出来ます。
レディス、メンズともに片方ずつのハート模様を彫っていただき、2つを合わせるとハートマークが浮かぶ結婚指輪が完成します。 ハートの形をキレイに仕上げをさせていただき、写真の指輪はピンクブラウンメッキを施して、ハートがより強調され可愛らしい結婚指輪に仕上がりました。
丸い形を活かしてネコの肉球を彫り、ネコの足跡が入った結婚指輪を作ることも出来ます。 その他工夫すれば様々な模様が作れると思います。
■ 先の細いテーパーポイント
先の尖った細いダイヤポイントを使って指輪の表面に細い溝ラインを彫ることが出来ます。 ランドポイントと違って細かい作業になりますので肉眼で見にくい場合は拡大鏡を使っての作業していただけます。
溝の深さは0.2mm~0.3mmほどで貴金属に仕上げるとハッキリと模様が浮かびますのであまり深く彫る必要はありません。 この細いポイントを使って文字やマークを彫ってオリジナルの模様が入った結婚指輪が作れます。
文字などを彫る
指輪の幅は2mm~3mmと細いので余り複雑な模様を彫るのは難しく、文字でも英字のイニシャルの様なデザインであれば初心者の方でも彫ることが出来ます。 写真はイニシャルの「M」を少しデザインして指輪の表面に彫っています。上のハートのように2つの指輪にまたがってイニシャルなども彫ることも可能です。
ワックスの彫りのラインが多少ガタガタになっていても貴金属に仕上げの段階でキレイに滑らかなラインになるように仕上げております。
また、ハンドモーターの先が滑って表面に傷が入ってしまっても金属になってから磨けばわからないようになります。 写真ではブルーのカラーを入れて文字を目立つようになりカラフルでオシャレな仕上がりになっています。
マークなどを彫る
文字と同様に複雑な模様を彫るのは大変ですが、シンプルなデザインでも存在感がある面白いデザインもたくさんあります。 可愛らしいスマイルマークをワックスに彫っています。
スマイルマークが可愛らしく、とても愛嬌豊かな結婚指輪が完成しました。 その他、シンプルなデザインでオシャレなデザインもたくさんあると思いますので、ご希望のデザインがあればお客様が出来るかどうかご相談を承ります。
ハンドモータのポイントは様々な形や大きさがありますので工夫次第でいろんな模様が彫れそうです。 当店でまだ製作してしていないデザインもお客様のアイディアで更にオシャレなデザインが出来ると思います。
ワックスは修正が可能です
結婚指輪を作るための素材のワックスはとても便利で熱で溶かすとくっつけたり盛り上げたりが可能です。 作業途中で折れてもくっつけたり、彫るのを失敗しても熱で埋めてしまって改めて彫り直すことが出来ます。 最初から作り直す心配がありませんので安心してワックスで指輪作りを楽しんでいただけます。
途中で折れてしまったワックスです。くっつける事が出来るのでご安心ください!
ワックスペンという先が熱くなる半田ごてのような工具を使ってワックス表面を溶かして折れた部分を繋いでいきます。
少し多めにワックスを盛ってヤスリで整形すると折れる前の元の状態に戻ります。
結婚指輪のデザイン別による製作方法-目次