結婚指輪の詳しい作り方4

4.結婚指輪の形とワックス作り方 S字と他の形

S字型やV字型など歪んだ形のワックスを手作りするのもストレート型を作るのと最初は同じ行程で手作りしていきます。 歪んでいるタイプの指輪の場合は、その歪み幅分のワックスを切り出し、余分な部分を削って広めのワックスから形を削りだして作ります。 ワックスは柔らかいので削るのは簡単ですが、歪めたり出来ない素材なのですべて削り出して形を作っていきます。

CONTENTS

歪んだ指輪共通の作り方

歪んだタイプの指輪を手作りするときに共通することはどのくらいの幅から削り出せば希望の指輪を削り出せるのかを考えることです。 お客様の方では細かい部分がわかりにくいと思いますのでデザインの希望を伺ってこちらで切り出す幅を算出してご提案を差し上げます。

歪み幅分の切りだし

歪んでいる幅分からのワックスを切り出すと言っても、文字だけでは伝わらない部分もあると思いますので図にしてご説明差し上げます。 ストレート型は単純に作る指輪幅のワックスを切り出すのに対し、図のように点線部分が必要になるワックスの全幅です。

歪んだ指輪は歪み幅分のワックス幅が必要

指輪の細さで歪み加減が変わる

歪み幅が必要になるのはおわかりになったと思いますが、ここで少し重要になってくる部分が歪み加減です。 歪み方が緩やかで良いのか、大きく歪んだ方が好みなのかで切り出す幅が変わってきます。

 

図を見ていただくと、同じ5mmのワックスから削り出しても、仕上げる希望の指輪の細さによって歪み方が変わります。 指輪が太いと歪みが浅くなり、細いと歪みが深くなります。 まずは希望の指輪幅を決めて頂き、歪み加減を相談しながら切り出すワックス幅をこちらからご提案差し上げます。

指輪幅の細さでS字型歪み加減が変わる

指輪サイズで歪み加減が変わる

もう一つ、歪み加減が変わってくる要素として指輪のサイズによっても変わってきます。 図を見ていただくとわかるように同じ5mm幅のワックスから同じ2.5mm幅の指輪を削りだしたとしても、サイズが小さいとカーブがきつく、サイズが大きいとカーブが浅くなります。 手作りで作った場合カーブの深さをを揃えるのはなかなか難しく、一般的には同じ5mm幅から作っていただく事が多いです。

ただし、もともとカーブの浅いデザインがご希望の場合で男性物のサイズがかなり大きい場合は切り出す幅を少し広くして作っていただいております。 当店の職人がこれまでの経験を生かしてどのくらいの幅から削り出せばいいのか精査してご提案差し上げます。

指輪サイズで歪み加減が変わる

S字型のワックス製作

それでは、S字型の結婚指輪を手作する手順を図解と共にご説明していきます。 S字型のフォルムは女性らしい優しいイメージを与えるので女性に人気のデザインです。 ストレート型よりも削る部分が少し多くなりますのでその分時間も必要です。

 

上記でご説明したように歪み幅分のワックスから形を削りだしてくのですが、何所をどのように削っていけばよいのか展開図を用意しました。 リング状になった指輪がS字型になっている形は一見どのようにゆがんでいるのかわかりにくいと思いますが、展開図をご覧頂くと意外と単純な形である事がわかります。 指輪全周を4等分して上下に4回波打っている形です。

S字型指輪の展開図

指輪サイズ、指輪の細さを考慮して歪み加減に必要なワックスを切り出し、平打ち型の指輪を手作りで削り出します。 ストレート型の指輪を作るのと同じ行程で幅を広めに作るだけです。 この平打ち型の指輪を作るための行程がわからない方は「2.結婚指輪の形とワックス作り方 ストレート」をご覧ください。

S字指輪に削るため幅広のワックス

平打ち型のワックス原型が出来上がったら当店の職人が、上記の展開図のとおりにマジック等で下書きを書き入れます。 黒くマジックで塗りつぶされた部分を削っていくとS字型のフォルムが出来上がっていきます。

S字指輪に削るためマジックで下書きしたワックス

まずは1箇所、半月状の部分を削ります。使うヤスリは緩やかな半甲丸のヤスリを使います。 滑らかに削るコツはヤスリを同じ位置ばかりで動かさずに横とか斜め方向にストロークしながら削ります。 ヤスリの位置を常に動かすことで1箇所だけ大きく削れすぎるのを防ぎます。

 

万一、削り箇所が凸凹になってしまっても職人のサポートでキレイに仕上げますのでご安心ください。

指輪の半月状部分を削ったワックス

1箇所半月状の部分が削れたら続いて残りの3箇所も同様に削ります。 この時、全体的にワックスが細くなってくるのでワックスを持つ手に力が入らないように優しく持ちます。 ヤスリで強く擦らなくても撫でるように擦るだけでワックスは削れるので力を入れずに削りましょう!

 

4箇所全て削れたら表面の角を丸くしてワックス原型の完成です。

S字型指輪完成ワックス
S字型手作り結婚指輪の完成

 

完成したワックスをお預かりして完成した手作り結婚指輪はこのようになります。 全体的に丸みを帯びたフェミニンな結婚指輪になります。

S字型指輪のプラチナ手作り結婚指輪
S字型指輪のワックスを削るお客様

V字型・U字型のワックス製作

次ぎにV字型とU字型のワックスを手作りする方法をご説明します。 V字型とU字型はトップ部分がシャープに尖っているか緩やかにカーブしているかの違いで作り方は同じです。

 

こちらも展開図をご用意しましたのでご覧ください。トップ部分のみ下方向へ歪んでいるだけの単純な形です。 後ろ部分は真っ直ぐなのでストレート型と同じですが、トップ部分の歪みに合わせた幅で平打ちワックスを削り出します。

V字型指輪の展開図

S字型の製作手順と同様にマジックで削る部分を黒く塗りつぶしています。V字にするか、U字にするかでトップ部分の塗りつぶしを変えます。 この下書きに使っているマジックはワックスに対して通常のマジックよりもハッキリして消えにくい物を使用しています。

 

写真はシャープなV字型指輪のワックスに下書きをした物です。V字型もU字型も作り方は同じなのでV字型指輪ワックスの写真と手順でご説明します。

V字指輪に削るためマジック塗りつぶし

まず、V字の上の部分を削ります。塗りつぶされたマジックが少しだけうっすらと残るぐらいまで削ってV字の部分を仕上げます。 使うヤスリは三角と半丸の平らな方中目ヤスリです。

V字型指輪ワックス上を削る

次ぎに上下をひっくり返して半丸ヤスリでV字下のカーブした部分を削ります。 この部分はS字型と同じように削れば大丈夫です。後ろの方は残したままでV字の前部分下の両サイドを仕上げていきます。

V字指輪ワックス下を削る

V字の前の方が出来たところで後ろ半分は真っ直ぐなストレートラインなので荒めのヤスリでざっくりと削っていけます。 ただし、細くなってくるとワックスの強度が落ちてくるのでワックスを持つ手は力を抜いて優しく持って削ります。

V字型指輪ワックス後ろのマジック塗りつぶし

全体を仕上げればV字型の手作りワックスが完成です。 あとは角を落として丸く仕上げるなどすれば全て完成です。

V字指輪ワックスの完成
V字型手作り結婚指輪の完成

 

プラチナで鋳造して完成した手作り結婚指輪です。女性物はダイヤを沢山埋めこんでゴージャスに仕上げました。 男性物もシャープな格好いい雰囲気の結婚指輪になります。

V字型手作り結婚指輪の完成
V字型指輪のワックスを削るお客様

その他の形のワックス製作

手作りで結婚指輪を作るワックスの削り方はS字型、V字型、U字型と基本は同じです。 作りたい指輪の形に合わせて必要なワックスから削りだして全ての形を手作りします。 単純な形から複雑な形まで、どのように削れば良いのかわかりにくいデザインの結婚指輪もご相談いただければその作り方を考えてご提案いたします。

こちらはS字型によく似た形をしている結婚指輪のワックス原型ですが、トップの部分の腕の付き方が互い違いに合わさったようなデザインです。 このようなデザインでもワックスにマジックで下書きをしてお客様に手作りしやすいようにサポートさせていただいております。

互い違いの腕の指輪ワックス原型

ワックスはプラチナ部分とピンクゴールド部分に分けて鋳造し、仕上げる段階で溶接して仕上げております。 完成した結婚指輪のデザインは作っていただいたワックス通りに仕上がっております。

互い違いの腕の結婚指輪の完成

六角形の珍しい形の結婚指輪のワックスを手作りしていただきました。 このような形の場合は機械で作ったような正確な六角形に手作業で作るのは難しいですが、一辺の長さが多少違っていても手作りの味になります。 少しずつ削りながら全体のバランスを見て、合間にサポート修正を加えながら作っていただきますのでご安心ください。

 

あまり角がピンピンに立っている状態だと指に当たると違和感があるので、少し角を落として仕上げます。

六角形指輪ワックス原型

六角形のワックスはプラチナ鋳造して内側をピンクブラウンとブルーのコーティングを施しました。 表面の加工でレディスはブラストツヤ消し、メンズはシルクサテン仕上げにしております。 かなり個性的なフォルムに仕上がりました!

六角形結婚指輪の完成

珍しいワックス原型でX型の結婚指輪です。 細かい隙間を削るのは少し時間もかかり難しい作業でしたがご希望通りのワックス原型が出来ました。

X型指輪ワックス原型

指につけるとX型で、その全周は丸い形ではなく8角形をしております。 X型なので2連の指輪をしているように見え、重なった腕をそれぞれツヤ消しと光沢仕上げにして形を強調する仕上げにしております。 ホントに個性的な逸品に仕上がりました。 レディスはダイヤモンドを埋めこんでかなり豪華で拘りの結婚指輪の完成です!

X型結婚指輪の完成

これまでのページで手作り結婚指輪を作るための準備、実際のワックスの製作方法をご紹介いたしましたが、この作り方を参考にご自分達で作りたい指輪があればご相談ください。 細かく説明した作り方を基本に様々な形の結婚指輪の製作が可能なのでオンリーワンの逸品が出来上がります。 また、工房直営の為完成した結婚指輪の価格はとてもリーズナブルになっており人気の結婚指輪の購入方法になっております。


次のページでは完成した結婚指輪のワックス原型がどのようにしてプラチナなどの貴金属に仕上がっていくのか、専門的な作業行程になりますがご紹介いたします。

結婚指輪のデザイン別による製作方法-目次